犬が口を大きく開けて「ふぁ〜っ」とあくびをする姿は、とても愛らしいものですよね。
私たち人間が眠気を感じたときに出るあくびと同じように、犬も眠いときにあくびをすることがあります。しかし、犬のあくびには“眠い”以外にも、さまざまな理由が隠されていることをご存じでしょうか。
本コラムでは、犬があくびをする主な理由と、あくびが増えたときに疑うべき健康上の問題について、詳しく解説していきます。愛犬の変化に気づくための参考にしてください。。
犬はなぜあくびをするのか?知っておきたい3つの理由
まずは、犬があくびを見せる主な理由を整理してみましょう。一般的には以下の3つがよく見られます。
1 眠気やリラックスによる自然な反応
もっとも分かりやすい理由は、犬が“眠い”と感じているときに出るあくびです。のんびりくつろいでいるときや、食後の満ち足りた時間、散歩や遊びのあとに疲れを感じているときなど、体が落ち着きを求めている時にあくびが起こりやすくなります。
なぜあくびが出るのかは医学的にも完全に解明されているわけではありませんが、
・脳に酸素を多く送り込むため
・呼吸を深めて換気を整えるため
といった説が考えられています。このような場合のあくびは自然な生理現象であり、心配する必要はありません。
2 緊張・不安を和らげるためのサイン(カーミングシグナル)
眠くもないのにあくびをしている場合、犬はストレスや緊張、不安を感じている可能性があります。これは「カーミングシグナル」と呼ばれる行動のひとつで、自分自身の気持ちを落ち着かせたり、相手に対して争う意思がないことを伝えたりする役割をもちます。
次のような場面で見られることが多いでしょう。
・見知らぬ場所に連れていかれた
・飼い主に怒られた直後
・他の犬と距離感を測ろうとしているとき
・大きな音がして緊張しているとき
「困っているよ」「落ち着きたい」「敵意はないよ」という犬の感情表現でもあります。愛犬がこうしたあくびをしている場合は、不安を取り除けるような環境づくりや声かけを意識してあげるとよいでしょう。
3 飼い主のあくびがうつることもある
人間同士であくびがうつるように、犬にも“あくびの伝染”が起こります。特に、親しい飼い主や家族のあくびを見たあとに犬があくびを返すことがありますが、これは深い信頼関係があるからこそ見られる現象だと考えられています。
また犬同士でもあくびが移ることがあり、これも社会的コミュニケーションの一部といわれています。「共感」の一種であると考えると、愛犬との絆を感じる瞬間でもありますね。
あくびが増えてきたら要注意?考えられる4つの病気
普段は問題のないあくびも、「回数が異常に多い」「明らかに様子がおかしい」という場合には、健康上の異変が隠れている可能性があります。ここでは、頻繁なあくびと関係しやすい4つの疾患を紹介します。
1 低血糖症
低血糖とは、血液中の糖分が低くなり、脳の働きが十分に機能しなくなる状態をいいます。脳への酸素供給を補おうと、あくびが増えることがあります。
▼低血糖で見られる症状
・食欲や元気がなくなる
・ふらつきや不安定な歩行
・嘔吐・下痢
悪化すると意識障害やけいれんが起きる危険もあるため、見逃せない症状です。
2 てんかんの前兆
てんかんを持つ犬では、発作の前に「頻繁なあくび」が見られることがあります。これは、小さな発作(部分発作)や予兆として知られる行動です。
▼てんかんで見られることがある症状
・顔面や手足のけいれん
・動きが落ち着かなくなる
・口をくちゃくちゃする
・よだれが大量に出る
てんかん発作が起きた場合は、無理に声をかけたり体を押さえつけたりせず、危険なものを遠ざけて静かに見守ることが大切です。
てんかんは生涯付き合っていく必要がある病気で、日常の観察がとても重要です。
3 貧血
貧血によって体内の酸素が不足すると、犬は無意識に酸素を取り込もうとしてあくびが多くなることがあります。原因は毒物、寄生虫、免疫疾患などさまざまです。
▼貧血の症状
・舌や歯ぐきが白っぽい
・すぐ疲れる・だるそうにしている
・食欲が落ちる
・呼吸が早くなる
重症の場合は生命にかかわることもありますので、早めの受診が必要です。
4 犬のうつ病
犬も長期間のストレスや環境の変化によって“うつ状態”に近い症状を示すことがあります。情緒の乱れを落ち着かせようとしてあくびが増えることがあります。
▼うつ病が疑われる症状
・遊ぶ意欲がなくなる
・家族から距離を置くようになる
・食欲低下
・些細なことで唸るなど情緒が不安定になる
散歩不足、長時間の留守番、家族環境の変化などがきっかけとなることがあり、飼い主のサポートが不可欠です。
あくびは犬からの大切なメッセージ
犬があくびをする理由は、眠気やリラックスといった自然な行動から、ストレス、不安、さらには病気のサインまで多岐にわたります。
何気ない仕草にこそ、愛犬の気持ちや体調が表れていることが多いため、普段からよく観察し、小さな変化を見逃さないことが大切です。
「いつもと違う」「あくびが止まらない」と感じたときは、念のため動物病院で相談してみると安心です。
この記事が、犬と暮らす方やこれから犬を迎える予定の方のお役に立てば幸いです。