猫の毛づくろいには、身体を清潔に保つだけでなく、ストレス発散やコミュニケーションなどの役割があります。「以前に比べて頻度が増えた」「毛づくろいで体にはげができている」といった場合は、病気や大きなストレスを抱えている可能性もあります。
本記事では、猫が毛づくろいをする理由や毛づくろいの役割を解説し、飼い主さんができるケアとして、ブラッシングの大切さを紹介していきます。愛猫の異変のサインを見逃さないように、ぜひ参考にしてくださいね。
猫が毛づくろいをする理由とは?
猫はとてもきれい好きな動物です。被毛の清潔やリラックス・コミュニケーションなどでも毛づくろいをおこないます。では、毛づくろいの具体的な理由を挙げましょう。
敵から身を守るため身体の清潔を保つ
猫の毛づくろいは本能的な行動といわれています。もともと狩りをする動物なので、外敵や獲物から存在を隠すため、汚れやにおいを舐めて落とし、身体の清潔を保つことが重要だったことが由来にあります。
体温を調節する
人間は汗をかくことで体温を下げることができますが、猫は汗腺が足の裏にしかないため、汗で体温を調節することができません。そこで、毛づくろいをして自分の唾液で毛や地肌を濡らし、水分が蒸発する際に身体の表面から熱を奪って体温を下げています。猫の唾液の蒸発は最大16℃といわれており、夏に熱を下げる効果としても大変大きいです。
気持ちをリラックスさせる
猫は緊張したときや、ストレスを感じたときに毛づくろいをすることがあります。たとえば、獲物を狙って失敗してしまったときに、毛づくろいをする様子をみることがありますよね。これは、失敗で受けたストレスを和らげてリラックスするためにおこなっています。
猫同士のコミュニケーションをとる
野良猫でも多頭飼いでも、お互いに毛づくろいをしている姿を見かけることがありますよね。猫同士の毛づくろいは「アログルームング」といい、コミュニケーションの役割があります。
猫同士の信頼を深める行為でもあり、愛情表現のひとつでもあります。セルフではできない首や耳、背中などを舐めていることから助け合いという意味でも捉えられています。
猫が毛づくろいしすぎてしまうのは問題あり
猫が毛づくろいをするのは、ストレス発散やコミュニケーションであることがわかりましたが、過剰な毛づくろいは問題があるので環境を変えてあげる必要があります。では、どのような原因があるのでしょうか。
ストレス
今までよりも毛づくろいを頻繁にするようになったら、強いストレスを感じている可能性があります。
猫は、環境の変化に不安を感じやすい動物です。引っ越し・新しいベッドやおもちゃなどの物的変化、生活のリズムなどの心的変化など、些細なことでもストレスを感じてしまうことがあります。
皮膚疾患
毛づくろいしすぎていたり、同じ場所を何度も舐めたりする場合、皮膚疾患の可能性があるので注意が必要です。
ノミ・ダニ・疥癬(かいせん)などの外部寄生虫や、細菌・真菌などの感染症、アレルギー、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患は、猫にとって強い不快感や痒みを引き起こします。皮膚の不快感やかゆみを緩和させるため、舐めて治そうとするため毛づくろいをします。
痛みや不快感
猫が同じ部位を何度も毛づくろいをしている場合は、その部位に痛みや不快感を感じている可能性を考えましょう。
関節炎や膀胱炎などの病気が原因で、猫は痛む部分を気にして毛づくろいを過剰にすることがあります。また、歯周病があり口の中が痛む場合は、よだれが増えたり、食事の後に口の周りが気になるために、前脚を舐めながら顔回りをしつこくぬぐうことがあります。
猫が同じ部位を舐めている場合は、よく観察し、異常がないか確認するようにしましょう。
猫のブラッシングの必要性
猫の毛づくろいは、猫だけしかできないことでもありません。飼い主さんがブラッシングしてあげることで、グルーミングと同じような効果も得ることができます。ここでは、ブラッシングの必要性について紹介しましょう。
皮膚や被毛を健康に保つ
ブラッシングには、皮膚と被毛の汚れを取り除き、清潔に保つという効果があります。また、抜け毛を減らし、毛づくろいの際に抜け毛を過剰に飲み込むことによる吐き戻しを防ぐことができます。加えて、ブラッシングのマッサージによって皮膚の血行を良くする効果も期待できます。
スキンシップと健康チェック
猫が同じ部位を何度も毛づくろいをしている場合は、その部位に痛みや不快感を感じている可能性があるでしょう。
関節炎や膀胱炎などの病気が原因で、猫は痛む部分を気にして毛づくろいを過剰にすることがあります。また、歯周病があり口の中が痛む場合は、よだれが増えたり、食事の後に口の周りが気になるために、前脚を舐めながら顔回りをしつこくぬぐうことがあります。
猫が同じ部位を舐めている場合は、慎重に観察し、身体のどこかに異常がないか確認をしましょう。
毛玉吐き対策
猫はきれい好きな動物で、舌を使って体を舐めることで毛づくろいをします。毛づくろいをしている姿が愛らしいと思うことも多いのではないでしょうか。
このときに飲み込んだ毛は、消化されずに胃の中でまとまり、毛玉となって吐き出されます。吐き出すこと自体は問題ありませんが、ストレスや体調の変化がある場合は、過剰な毛玉吐きをすることもあります。
そのためにも、日々のブラッシングによって抜け毛を取り除き、猫が飲み込む毛の量を減らすことで、毛玉を吐くことを防げるようにしてあげましょう。
ブラッシングの習慣化のすすめ
子猫のうちは、そこまで汚れもありませんし、頻繁なブラッシングは正直なところ必要ありません。しかしブラッシングは、スキンシップとしても有効で、健康チェックなどの定期的な健康管理のためにもブラッシングに慣れさせておくことはおすすめです。
落ちついたタイミングで、無理せずスキンシップを重視しながら短時間で終わらせるようにしましょう。
ブラッシングのやり方
猫のブラッシングは難しくはありません。しかし、苦手な猫もいるのでストレスにならないようにおこないます。長時間のブラッシングが苦手な猫には短めにおこないましょう。
1.全身を手で触り撫でて絡まった部分がないか確認する
2.ブラシ・コームなどで丁寧に毛並みを整える
3.ブラシを使って優しく必要な場所をとかし、必要に応じてコームなどで仕上げる
4.(短毛種の場合、2〜3日に1回を目安に、長毛種は毎日ブラッシングをする)
ブラッシングも一カ所をやりすぎると、毛が過剰に抜けてしまったり、逆に毛並みや毛づやが悪くなることもあります。
まとめ
猫は日常的に毛づくろいをする動物のため、たびたび毛づくろいをする姿が見られるのは普通です。しかし、明らかに毛づくろいしすぎていると感じる場合や、毛づくろいしすぎて脱毛が見られる場合は、猫がストレスを受けていたり、皮膚疾患にかかっているかもしれないので注意しましょう。
ストレスや病気にいち早く気づいてあげる方法として、ブラッシングでのコミュニケーションは必要です。毎日のケアとしてしっかりブラッシングをおこなうだけでも違います。
また、毛づくろいではげてしまったり皮膚疾患の恐れがある際は、必ず専門獣医師の診察を受けるようにしましょう。